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真面目な顔をして門脇がクロードを呼んだ。
(クロード先生……?)
門脇のそんな言葉、初めて聞く。
「外国じゃ当たり前かもしれないけど、日本じゃマイナーなんだ。しかも学生と先生って関係だし、知られるとまずいんだ。だから、これは俺と先生の秘密。誰にも言わないで欲しい」
「か……門脇?! 何、言ってるんだ、お前」
知己が諫めると
「あははー。冗談、冗談。ちょっと言ってみたかっただけ」
と悪びれずに門脇は笑った。
だが、クロードは
「……」
黙り込んで、なにやら考えている様子だ。
「違う! 違うぞ、クロード!」
全力で否定するが、聞いているのか聞いていないのか。
クロードはそのまま黙ってしまったので、図りかねる。
「あのぅ……」
そこに申し訳なさげに
「俺、もう帰っていいですか? 家で勉強したいんで」
隣の理科室から、菊池がぼそぼそと言うのだった。
菊池が、「もう二度と赤点なんか取るもんか」と色んな意味で反省し、その後は必死で勉強したらしい。
その甲斐あって、次の考査では及第点に達することができたのは、その一ヶ月後のことであった。
-第6話・了ー
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