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「この子も連れて行けばいいのに」
と独りごちた。
聞きつけて、知己が
「いいじゃないか。たまには子ども抜きで、大人だけでゆったりとした旅行をしたかったんだろ?」
両親と兄夫婦を弁護する。
「えー!? 僕と先輩での二人きりでのゆったりとした週末は?」
あからさまに嫌な態度を取る将之に
「そんなの毎週過ごしてるだろ? そんなに迷惑だったら、お前には迷惑をかけない。俺、宗孝を連れて実家に帰るよ」
知己がごく普通に現状の打開策案を出したのだが
「じ、『実家に帰らせていただきます』だなんて、ダメに決まっているでしょ!」
(……何の昼メロ見たんだ、こいつ……?)
妙に焦った将之に全力に止められた。
「だったら、二日間、我慢しろ」
こともなげに知己は言う。
「うーーーー……」
納得できずにいると
「宗孝、この意地悪お兄ちゃんのいうことは気にしなくていいからな。叔父ちゃんは宗孝と一緒で嬉しいぞ。さ、あっちで叔父ちゃんとビデオの続きを見よう」
将之に見せたこともない優しげな表情で、宗孝に語りかけた。
「叔父ちゃん、『ビデオ』じゃないよ。『DVD』」
「ああ、そうだったな。『DVD』を一緒に見よう」
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