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慣れない場所で、不安だというのもあっただろう。
夕飯も風呂も一緒。
片時も、宗孝は知己から離れようとしなかった。
やがて21時を過ぎた頃、疲れた様子で、宗孝の瞼が重たげに落ちてきた。
知己に寄りかかり、こしこしと目を擦る。
「寝るか? 宗孝」
「うん。叔父ちゃんと一緒がいい」
うつらうつらとしながら、知己にひしとしがみつく。
「なんなんですか、この甘えん坊は。一人で寝ろ」
苛々が募り、吐き出すように将之が言うが
「五歳児なんだから、普通だろ? 意地悪言うなよ。だから意地悪お兄ちゃんって言われるんだ、お前は」
知己は、全く相手にしない。
「その意地悪お兄ちゃんってのも、気に入らない」
「まんまじゃねえか。大体、俺は『意地悪おじちゃんでいいぞ』って言ったのに、宗孝が『叔父ちゃんとごっちゃになるから、お兄ちゃんって言う』ってさ。我が甥ながら、なんて気遣いのできる五歳児なんだろ」
「それ、明らかに先輩に対してで、僕には1ミリも気遣ってないですよね?」
「あー、もう、将之がうるさい。宗孝が眠れないだろ」
知己が宗孝を抱き上げる。
「意地悪お兄ちゃんがうるさいから、ベッドのお部屋行こうな」
「うん」
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