301人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
「僕には『優しくしない』なんて言った先輩の方が悪いと思いますけど」
反対に、将之は見下ろしながら自分の影に収まっている知己を見据える。
「当たり前だろ。五歳児みたいな扱いを、お前にできるか」
「別に『幼児プレイ』したいって言っているんじゃないですよ」
「……え、そうなんだ?」
意外そうに知己は言った。
「てっきり、また余計な知識を付けやがったと思ってた……」
「ああ。それで」
納得したように将之が言った。
「あんなに『できるか』と頑なに拒否してたんですね」
「……」
(優しくしてほしいと言っただけなのに、俺に真っ向拒否されて怒った訳か)
図らずも知己も納得していた。
「いくら僕でも、そんなにありとあらゆる扉を開きはしませんよ」
「どうだか……」
将之の言葉に、説得力がない。
ソファに仰向けになると、赤々と照らし出されるリビングの照明がまぶしい。
「電気、消して」
知己が頼んだが
「嫌です。今日は、よく見せて下さい」
即、断ってきた。
「やっぱり……。これで、よく『ありとあらゆる扉を開いていない』なんて言えるな」
「いつも薄暗いベッドルームでしているんだから、今日くらいいいでしょ? それにさっき、何でもしていいって言ったし」
「……」
押し黙る知己に
最初のコメントを投稿しよう!