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「このまま、自分でして見せて」
「……え……?」
将之の言っている意味が分からない。
「自分でしてみせてください」
「自分でって……?」
知己は答えに窮する。
「したことないなんて、言わせませんよ」
「……お前が居るのに?」
戸惑いながら尋ねると
「そう、僕が居るのに。僕の目の前で、してみせてください」
なんとも嬉しそうに将之は微笑む。
思わず
「……へ、変態」
と知己は言うしかできなかった。
「お前は『意地悪お兄ちゃん』じゃない。正しくは、『変態お兄ちゃん』だ」
罵ってみたが
「あははー。先輩ったら、それは褒め言葉ですね」
将之はますます喜ぶばかりである。
「どこをどう聞いたら、褒めてるように聞こえるんだ?」
「ほら、ほら。大きな声を出さない。可愛い甥っ子ちゃんが起きちゃいますよ。それよりも、折角右手がこんなに濡れているんだから……」
将之は、知己の右手を広げ、中心に宛がう。
(誰の所為だ!?)
「使わないってのも、もったいないでしょ?」
(変な所で、せこいな、お前!)
ツッコミたかったが、声を出すと怒鳴りつけそうになるので、知己はやっとの思いで我慢した。
「やり方分からない……なんて言わないでしょ?」
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