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「えっ……?」
嫌な汗が、どっと噴き出す。
「叔父ちゃん、意地悪お兄ちゃんに乗っかられて、なんだか苦しそうにしてた。うんうん唸っていたよ」
(まさか、宗孝……あのとき、起きていた?)
真偽を確かめようもない。
そんな勇気は、知己にない。
「そうか。そんな夢を見たのか……」
努めて平静を装って、答えた。
「叔父ちゃんは、いつも意地悪お兄ちゃんに苛められて嫌じゃないの?」
助手席に座る宗孝が心配そうに知己の顔を覗き込む。
「大丈夫だ」
「本当?」
座高の低さから、宗孝は知己を見上げる。
不安そうに瞳が揺れている。
自分を心より愛してくれる叔父を、宗孝も純粋に慕っていた。
あまりに清らかな視線に、知己は後ろめたさを感じてしまう。
「だって、それは夢だろ? だから大丈夫だよ。それは夢だから、叔父ちゃんは、本当は苛められてなんかないよ。それは夢だったんだから」
知己は、「それは夢」をやたら強調する。
「でも、意地悪お兄ちゃんは、やっぱり朝も意地悪を言ってたよね?」
ベッドルームでまどろんでいる宗孝に、朝のやりとりも聞かれていたようだ。
「そ、それは……」
知己は更に青ざめるが
(朝はヤバい話、してないよな……?)
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