第8話 疑惑に囚われた将之

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第8話 疑惑に囚われた将之

 自室で期末考査の採点をほぼ終え、 「今回、菊池はよく頑張ったなぁ」  ぼそりと知己が呟いた。  その答案には、「61点」と書いてある。 「前回の3倍近い点数じゃないか」  理科室で、渋々だが勉強させた甲斐があったと喜ぶ。 「明日、菊池に会ったら褒めたいな」  などと思っていた時だった。 「先輩、……ちょっと、こちらに」  将之が声をかけた。  どうやら、リビングに居るらしい。 「何?」  部屋から返事したが 「ちょっと……、こっちに来て下さい」  としか言わない。  それで仕方なく (何だろう?)  知己は、将之のいるリビングに向かった。  将之はソファに座っている。  部屋からやってきた知己を見ると、手のひらを出し「隣にどうぞ」と仕草をした。 (なんか変だな)  知己は、将之から少し間を開けて座った。  知己が座るのを確認するかのように、その一連の動作をじいっと眺めていた将之は、やがて 「先輩……。僕が、最近東陽高校に行けていないからといって、浮気はいけませんよ」  と言い出した。 「は? 何、それ。何の話?」  唐突な話に、知己の頭に疑問符が浮かぶ。     
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