第8話 疑惑に囚われた将之

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「お前だって、後藤君と仲いいだろ。よく喋ってるみたいだし、家にまで遊びに来る。その方がよっぽど仲良いんじゃないか?」  ささやかな知己の反撃。 「後藤は、ただの後輩ですよ」 「知ってるよ」 「だったら、いいじゃないですか?」 「お前、自分のことは棚に上げて……だな……」  知己は呆れた。 「先輩の場合は、そうじゃないでしょ?」 「同じ。どう考えたって、お前と後藤君の関係と同じ。職場の年が近い同僚って関係」 「ぜーーーーーーーーーったいに、違います。先輩の場合は、浮気」 「なんで、そう言い切れる? お前、見たこともないくせに」  そこで、ふと気付いた。 「そういえば、お前、最近うちに来てないな」 「……先輩、今頃気付きましたか? もう7月ですよ」  今度は将之が呆れた。 「何だよ。今頃……って」 「僕、今年度から……つまり4月から担当が変わったんです」 「え?」 「長く同じ学校を担当すると、教育委員会と学校の癒着が湧く可能性があるとかで、そういう疑惑をなくす為に、長くても二年間しか同一校を担当できないんです。そういう仕組みなんだそうです。それで僕は、今年度、東陽高校の担当を外れました。今までみたいに、行事の来賓や委員会の監査で行くことはなくなったんですよ」 「あれ? 今年の卒業式の来賓は、お前じゃなかった気がするが」     
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