第8話 疑惑に囚われた将之

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「あの時は出張中だったので、僕の代理が行ってますね」 「へえ」  確かに3月始め、将之は出張だと東京へ行ったのを思い出した。 (しかし、委員会の人事にそんなシステムがあったのか……)  火のない所に煙は立たぬ……ではないが、その火のもとを失くすシステムに、知己は素直に感心した。 「……なんか、嬉しそうにしてませんか?」  将之は疑り深く、追求する。 「気のせいだろ?」  言いつつも、知己は密かに喜んでいた。 (やったー! これで、色々ややこしくならなくて済む!)  門脇一人でも持て余し気味だったのに、放課後や行事の度に将之が来て絡むと、ややこしい事態が、もっとややこしくなる。  門脇と将之、二人のやりとりに冷や冷やしていた知己は、心底喜んでいた。 「言っておきますけど、来賓などでは行きませんが、外来者としてはいつでも行けるんですから、ね」 「おう。時間外にだろ? 俺は構わないぞ。来い、来い」  門脇達の居残りが認められているのも、5時までだ。  面倒な衝突さえなければ、それでいい。  だが、そうなると益々謎は深まる。  浮気などではないが、何故将之がクロードの事を知りえたのか。 「今年度の東陽高校担当は……後藤なんですよ」 「ご、後藤君……?」     
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