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「あの時は出張中だったので、僕の代理が行ってますね」
「へえ」
確かに3月始め、将之は出張だと東京へ行ったのを思い出した。
(しかし、委員会の人事にそんなシステムがあったのか……)
火のない所に煙は立たぬ……ではないが、その火のもとを失くすシステムに、知己は素直に感心した。
「……なんか、嬉しそうにしてませんか?」
将之は疑り深く、追求する。
「気のせいだろ?」
言いつつも、知己は密かに喜んでいた。
(やったー! これで、色々ややこしくならなくて済む!)
門脇一人でも持て余し気味だったのに、放課後や行事の度に将之が来て絡むと、ややこしい事態が、もっとややこしくなる。
門脇と将之、二人のやりとりに冷や冷やしていた知己は、心底喜んでいた。
「言っておきますけど、来賓などでは行きませんが、外来者としてはいつでも行けるんですから、ね」
「おう。時間外にだろ? 俺は構わないぞ。来い、来い」
門脇達の居残りが認められているのも、5時までだ。
面倒な衝突さえなければ、それでいい。
だが、そうなると益々謎は深まる。
浮気などではないが、何故将之がクロードの事を知りえたのか。
「今年度の東陽高校担当は……後藤なんですよ」
「ご、後藤君……?」
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