第8話 疑惑に囚われた将之

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「でも、僕はぴーんと来ましたよ」  将之は、尚も続けた。 「将之が『ぴーんと来る』なんてのは、いつもの事だろ。家永の時も門脇の時も、いっつも過敏に騒いで。俺は、それよりも後藤君と卿子さんの事が気になってだな……」  卿子の話を聞いて、不機嫌に答える。 (明日学校に行ったら、卿子さんに後藤君の事、釘を刺しておこう)  ぶつぶつと考え込んでいる。 「でも、実際にそうだったじゃないですか。家永さんも門脇君も、あなたの事が好きだったじゃないですか」 (しまった……)  墓穴とは、まさにこのことを言うのだろう。  知己は、言い返す言葉を無くした。 「だから、その英語教師は怪しい」 「怪しくない」 「即答しましたね」 「お前が言うほど、俺に興味持つヤツなんて居ないって」  知己が大学時代に付き合った女性は二人。  それも長く付き合えなかった。  実際、卿子の事だって、同じ職場で二年以上も一緒にいるのに、進展はほとんどない。 「僕が知っているのは、高校時代のあなたですから。あの頃もすっごく、もてまくってました」 (そうだった。こいつは、俺の黒歴史を知る奴だった)  かつて、悲しいことに女子の居ない学校で、異常にもてた知己が居た。     
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