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「でも、僕はぴーんと来ましたよ」
将之は、尚も続けた。
「将之が『ぴーんと来る』なんてのは、いつもの事だろ。家永の時も門脇の時も、いっつも過敏に騒いで。俺は、それよりも後藤君と卿子さんの事が気になってだな……」
卿子の話を聞いて、不機嫌に答える。
(明日学校に行ったら、卿子さんに後藤君の事、釘を刺しておこう)
ぶつぶつと考え込んでいる。
「でも、実際にそうだったじゃないですか。家永さんも門脇君も、あなたの事が好きだったじゃないですか」
(しまった……)
墓穴とは、まさにこのことを言うのだろう。
知己は、言い返す言葉を無くした。
「だから、その英語教師は怪しい」
「怪しくない」
「即答しましたね」
「お前が言うほど、俺に興味持つヤツなんて居ないって」
知己が大学時代に付き合った女性は二人。
それも長く付き合えなかった。
実際、卿子の事だって、同じ職場で二年以上も一緒にいるのに、進展はほとんどない。
「僕が知っているのは、高校時代のあなたですから。あの頃もすっごく、もてまくってました」
(そうだった。こいつは、俺の黒歴史を知る奴だった)
かつて、悲しいことに女子の居ない学校で、異常にもてた知己が居た。
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