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時は遡り、十年前。
桜舞う四月。
私立鷹隼高校一年教室の放課後。
「高等部と言っても、あんまり変わってないなぁ」
中位将之は、三階にある一年教室から中庭を見下ろして呟いた。
「中位くん、久しぶり。僕のこと、覚えてる?」
不意に声をかけられた。
「……誰?」
「まあ、覚えてもらえていると思わなかったけど。遠慮無く、ずばっと聞いてきたね」
「転校が多いもんで、覚えてられないんだ」
父の仕事の関係で、将之は転校が多かった。
ここは父親の基盤ともいえる地。
来ては離れ、離れては戻ってきた。
幸いにも、鷹隼学園には小学部から高等部まで設立されている。
その関係もあって、将之はこの学校で転出入を繰り返していた。
「僕、五代光(ごだいひかる)だよ。小学校や中学校でも、同じクラスになったことあるんだけど……」
「なんとなく、聞き覚えはある……かな」
社交辞令的に将之は言った。
転出と転入を繰り返しているのだ。
そういう級友もいるだろうと思った。
「中位くんとまた同じクラスになれて、嬉しいよ」
「そう? ありがとう」
「今から部活見学に行くんだろ? 部活は何にするの? もう、決めた?」
「剣道部」
「え? 君も……?」
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