第8話 疑惑に囚われた将之

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 ご機嫌に話していたのに、邪魔をされて将之が五代を睨んだ。 「平野先輩に胸囲を求めちゃダメだよ」 「なんで?」 「だって、先輩、男だよ。胸囲あったら、気持ち悪いじゃない?」 「は?」 「は? ……じゃないよ。僕らの通っている学校、男子校じゃないか。中学部までは共学だけど、高等部からは男女別学のシステムとっているんだから、平野先輩は、れっきとした男だよ」 「え……?」  しばしの間。 「……分かってたよ。もちろん」  やがて、平静を装いながら五代に告げた。  堂々というので訂正した五代の方が、余計な気を回したかと恐縮するくらいだ。 (そうか。つい、中学部の延長のノリで考えてた。礼ちゃんも、中学部に通っているし、失念していた……)  おくびにも出さず、将之は思った。  中位礼(なかい・あや)は、将之の三つ下の妹である。  今回、中位父の転勤で、一家揃って引っ越してきた。 「ウィットに富んだジョークだよ。ちゃんと平野先輩が男装の麗人だと分かって、ふざけて言ったんだ」  将之が胸を張って言ったが、 「それ、誤用だよ。男装の麗人って、女性に対して言う言葉だよ」 「え? そうなんだ」  墓穴を更に深く掘り下げる真似をしてしまった。     
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