第8話 疑惑に囚われた将之

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 もはや慣れた様子の五代が答えた。  黙って、その人だかりを将之が睨め付けていると 「何?」  五代が不思議そうに尋ねてきた。 「そういうのって苛々する。先輩は、見世物じゃないのに」 「そうか、中位君は先輩目当てで部活に入った訳じゃないもんね」  かくいう五代は、特に入りたい部活もなかったので、剣道部を選んだという程度の入部動機である。  少し、将之に済まなさそうにしていた。 「いや、そんなことはないけど。僕も、先輩の事は相変わらず美人だなぁとは思うし」 (惰性で剣道部選んで、ついでに先輩を眺められたらいいかぁ……程度だし)  将之は、真面目に朝練に出続けた。  その理由に、知己も朝練に必ず参加するからというのも少しはある。  ずっと知己を眺めていて、少し分かったことがある。  毎朝練習に出てくる真面目さに加え、そっけない態度は初日だけということだ。  見世物的なあの日はどうしても不機嫌になってしまったが、普段は後輩が尋ねてきたことに真摯に教える姿もあった。 (先輩って、外見だけじゃないんだな……)  認識を新たにする将之だった。 「と、いうか五代君」 「なに? 中位君」 「どうして、五代君は平野先輩にいちいち聞きに行くのかな?」     
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