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もはや慣れた様子の五代が答えた。
黙って、その人だかりを将之が睨め付けていると
「何?」
五代が不思議そうに尋ねてきた。
「そういうのって苛々する。先輩は、見世物じゃないのに」
「そうか、中位君は先輩目当てで部活に入った訳じゃないもんね」
かくいう五代は、特に入りたい部活もなかったので、剣道部を選んだという程度の入部動機である。
少し、将之に済まなさそうにしていた。
「いや、そんなことはないけど。僕も、先輩の事は相変わらず美人だなぁとは思うし」
(惰性で剣道部選んで、ついでに先輩を眺められたらいいかぁ……程度だし)
将之は、真面目に朝練に出続けた。
その理由に、知己も朝練に必ず参加するからというのも少しはある。
ずっと知己を眺めていて、少し分かったことがある。
毎朝練習に出てくる真面目さに加え、そっけない態度は初日だけということだ。
見世物的なあの日はどうしても不機嫌になってしまったが、普段は後輩が尋ねてきたことに真摯に教える姿もあった。
(先輩って、外見だけじゃないんだな……)
認識を新たにする将之だった。
「と、いうか五代君」
「なに? 中位君」
「どうして、五代君は平野先輩にいちいち聞きに行くのかな?」
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