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今日も五代は、手ぬぐいの巻き方が巧くできないと知己に聞きに行っていた。
「え? ダメ?」
「他にも先輩が居るじゃないか?」
「僕は高校から始めたド素人だから、分からないことが多くって。平野先輩もどんどん聞きに来て構わないって言ってたし。どうせなら、美人に聞いた方がいいかなって思ったんだけど」
「あははー、面白いな。五代君は」
「……あの、中位君。さりげなく抓らないでくれる?」
将之に笑顔で左腕を抓られ、五代が眉間に皺を寄せた。
「僕という者がありながら、先輩に聞きに行くってどういうこと?」
笑顔絶やさずに将之が言うと
「え? 中位君、それ、どういう意味……?」
五代がほんのり頬染めた。
「平野先輩じゃなく、昔っから剣道している僕に聞いたらいいよって意味だよ」
と冷たく言い、何故か五代はがっくりと肩を落とした。
そしてこの時ばかりは
(僕も質問にかっこつけて平野先輩としゃべりたいけど、質問することがない……)
と小さな頃から剣道をやってきた、知己よりも玄人な自分を嘆いた。
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