第8話 疑惑に囚われた将之

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(思ったよりも、しっかり筋肉付いているんだな……)  十七歳の知己には、現在の知己よりもまだあどけなさが残っており、その顔貌から女性的なイメージがあった。  だが、99%全裸状態を目の当たりにして、意外にも顔に似合わぬ男らしい体つきをしているのだと気付いた。  運動部ならではの毎日の走り込みや筋トレに加え、剣道部特有の素振りや毎朝道場の雑巾がけなどで鍛えられ、全体的に引き締まっていた。  ひたすら黙して、ただただ無遠慮に見つめる男の存在に気付き 「何? お前も、早く練習を上がったの?」  知己は声をかけた。  そこに立つ男が胴着を着ていることより剣道部員だというのは、一目瞭然。  後輩の一人であるということは判断できた。 「あ、はい。僕、日直なんで」  うっかり見入っていたことに気付き、将之は知己の言葉で現実に引き戻された。 「そうか」  知己は、がさがさと適当に頭や頭を拭き、まだ幾分水滴が残っているようだが、特に気にせずに制服を着始めた。 「先輩も日直ですか?」  胴着を脱ぎつつ、将之は尋ねた。 「いや、俺は……面倒になる前に、先にシャワーを借りているだけ」 「面倒?」 「俺が入ると、ただでさえ混むシャワー室が一層混むらしい(と、小松谷が言ってた)」     
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