第8話 疑惑に囚われた将之

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「……ということがあったんですが、覚えてますか?」 「いや、覚えてない」  考えを巡らせど、もはや十年も前の記憶。 「ですよね。僕のことなんか、教育委員会視察として東陽高校に行っても気付いてなかったし。同じ部活だったのに。しかも同じ大会にまで出たのに、全然覚えてなかったし」  ぶつぶつと文句を言う将之に 「あの時の剣道部の人数は半端なかったじゃないか」  と文句を言った。  当時の鷹隼高校は県内でも有数の剣道強豪校というのもあり、また知己の宣伝効果というか小松谷曰くの「ハニートラップ」効果か、とにかくやたらと部員は多かったのだ。  知己の後輩に当たる人間は、六十人近く居る。 「あの頃は、酷かったんだぞ。もう思い出したくもないけど、本当に、色々色々色々色々色々色々色々色々色々……あったんだから」  知己の口ぶりに、その悲惨な男子校時代の過去は想像に難くない。  将之のように無礼な振る舞いをする者が少なければ印象に残ってもいようが、大半は、知己に多かれ少なかれヤらかしている。 「シャワー室でブッキングした奴の大抵は、失礼なことを言うかするかしてたんで、面倒なんで片っ端から叩いたからな」 「なんて凶暴な」 と言いつつ     
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