第8話 疑惑に囚われた将之

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(この高校の時期に、今の先輩の、性的に見られると暴力ふるう性格がデキ上がったんだな)  将之は、一人、納得した。  そんな将之とは逆に 「その方が、俺に二度と近付かなくなるから良かったんだよ」  清々しく知己は笑った。  高校時代に暴力振るいまくったことなど全く気にしていないようだ。  だから、将之は 「先輩に近づく輩が減ったんなら、それはそれで良かったのかもしれない。僕はかなり痛かったんだけど……」  としか言えなかった。  その勢いで、つい 「ちなみに、あの時の先輩の裸体はしっかりと僕の網膜に焼き付いてしまい、時々助けてもらいました」  余計なことをカミングアウトしてしまった。 「ん? 時々、助けられるって?」  知己が尋ねる。 「あ。しまった。これも失言だ」  将之の方も、失言癖は相変わらずだ。 「なんだ、言えよ」  知己が、立場逆転とばかりに将之に詰め寄る。 「言っても怒りませんか?」 「怒らないから」 「でも、叩くでしょ?」 「叩かないから」 「蹴ったりは?」 「しつこいな。叩いたり蹴ったり殴ったりもしない」  知己は、苛々して答える。  それで観念したのか、将之が大きく息を吸い込むと 「じゃあ、言いますね」  ゆっくりと話し始めた。 「思春期の僕は、眠れない夜に、先輩のわがままボディが言葉にするのも憚られることを妄想して愉しみました」 「!」  聞いた瞬間、反射的に知己の握り拳が肩まで上がったが、将之が     
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