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(だけど、後藤君は職権乱用もいいとこだろ? 委員会の仕事を口実に、卿子さんの居る事務室に入り浸るなんて)
自分ができないことをあっさりやってしまう後藤に苛立つ。
(将之が手伝ってくれないんなら、どうやって後藤君を捕まえよう。理科室から、事務室のある管理棟は遠いし、四六時中見張っている訳にもいかないし。いつ来るか聞き出せたら、一番手っ取り早かったのに……)
知己は考え込んで、黙り込んでしまった。
(……)
そんな知己を見かねて
「……分かりましたよ」
(僕も甘い……)
将之が折れた。
「え、本当?」
先ほどまで暗く沈んでいた知己の表情が一変し、明るくなる。
「ただし、見返りがあってもいいでしょ?」
「えー? 俺とお前の間なのに、見返りなんているのか?」
不満げな知己に
「そうですよ。先輩と僕の間だから、見返りもあっていいでしょ? 約束反故しているんだから」
将之は毅然と言い放つ。
「分かったよ。それでいいから、後藤君のスケジュールを教えてくれ」
「分かりました」
将之は部屋に戻って、通勤カバンの中からスケジュール帳を取り出してきた。
「スマホで確認……じゃないんだな」
「別に。データを信用してないだけです」
「相変わらず、機械音痴も続行中なんだな」
将之の先ほどの意地悪い態度に、知己は言わずにはいられない。
「スマホでスケジュール管理してもいいんですが、僕の場合、変更多いし変更前のことも記録にとっておきたいし。紙ベースの方が何かと都合良いんですよ。大体、先輩だって相変わらず炭素と友達でしょ」
「うるさいな」
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