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先日、将之が「最高のデキ!」と嬉しそうにしていた夕食のおかずを、知己が温めて直して真っ黒にした記憶は新しい。
「早速ですけど、後藤は月曜に配布書類を持ってそちらに行く予定です」
「分かった。ありがとう」
知己は、嬉しさからか知らず笑みが零れた。
「あ、お前が教えたことバレバレって感じだけど、その場を捕まえてもいいか?」
「いいですよ。委員会でのデスクワークが溜まっているのに、後藤がなんだかんだと理由付けて東陽高校に行くのもどうかと思ってましたから」
「……お前の情報源が減るぞ」
「おや? どうしたんです? 先輩にしては殊勝な心構えじゃないですか」
「俺の所為でお前に迷惑がかかるのは、別問題だ」
「迷惑? そんなものかかりませんよ。クロードさんとやらと必要以上に仲良くしないんだったらそれでいいんです。どうせ門脇君は、あなたに手を出せそうもないし。あなたも今は門脇君を警戒しているでしょ? 門脇君は、家永さん以上に安心な存在ですよ」
にやりと笑ってみせる将之に、本気でそう思っていることがうかがえた。
(むしろ、門脇君が先輩の番犬的存在で、クロードさんのことを邪魔をしてくれると助かるし)
我ながら打算的だなぁと将之は、少しだけ思った。
将之にとって、一番面倒な存在はクロードでもなければ門脇でもない。
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