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「で、見返りって?」
知己が尋ねる。
「高校時代の話をしていて、先輩と胴着でシたくなりました」
「はあ? 何言っているんだ。神聖なる剣道着にお前、何を妄想しているんだ?」
(今度は、コスプレかイメクラの本でも読んで、余計な知識をつけたか?)
と知己は思った。
「僕だって最初は気付いてなかったんですが。ある日を境に気付いちゃったんですよ。胴着ってちょっとエロいですよね。手を入れ放題というか、あの隙間が誘っているというか」
ある日=知己とシャワー室でブッキングした日である。
その日以来、高校時代の将之が眠れぬ夜には、妄想の中で知己が胴着で乱れている。
(そんな過去もあったな……)
将之が思っていると
「胴着なんか無いぞ。実家にも」
素気なく知己が言った。
「え、そうなんですか?」
「母親が『汗臭い』と言って、俺が部活引退したら速攻捨ててた」
「いわゆる断捨離ですね」
将之は、おおらかな性格の平野母を思い出す。
「お前の方は?」
「剣道は大学まで続けたんですが、何せ転勤族なんで、今はどこにあるかは分かりません。最悪、ないかも」
「似たようなもんじゃねえか」
知己がそう言うと
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