第8話余談 疑惑Plus

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 知己は、笑顔でそう答えた。  それを聞き、少し着替えを手伝いたかった将之は 「ちっ」  と残念そうに、リビングに残って舌打ちした。  それを目の端で見て (やっぱりスケベ親父だった)  と知己は思い直した。  3分後。  知己がよくカップラーメンで使う三分オイルタイマー(砂時計のオイル版)が落ち切るのを今か今かと待っていた将之は、全て落ちたのを確認して、いそいそと寝室に入っていった。 「じゃーん! どうだ?」  着こなしに自信満々。  ご機嫌に見せる知己に 「わあ、似合っています!」  お世辞ではなく、心からの賛辞を述べた。 「身長差が10センチはあるから、丈が少し長いかなとは思うけど、許容範囲だろ?」  そんな知己に答えず、 「ああ、和服姿の先輩……、懐かしい」  と将之は、思いを九年前に馳せていた。  きっかけは、確かに外見だったかもしれない。  女性ではないと分かっていても、どうしても目で追ってしまっていた。  朝練や放課後の練習を共にし、真面目に取り組む様子や後輩への面倒見の良さなどに惹かれた。  黒い浴衣が、知己が愛用していた黒い胴着に重なって、思わず将之は 「先輩、好きです」  と抱きついた。 「うわ、いきなりだな」     
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