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「もはや何から手を付けたらいいか分からずに、現実逃避に外に出て、もっと酷い状態になりつつある……って所か?」
「ひぃっ!」
思わず後藤は、耳を塞いだ。
「現実に目を背けた所で、問題の解決にはならないだろう? 君に課せられたデスクワークは、君以外にできないんだ。魔法のように消えることなんてないんだから、諦めて、少しずつでもやり始めるしかない。違うか?」
「うっ!」
後藤が知己の言葉に胸が痛んだのか、胸元を抑える。
やがて
「す、すみませぇぇぇぇっん!」
後藤は、知己に持ってきた封筒を押しつけた。
完全なる降伏。
知己は、押し付けられた封筒を受け取った。
「これに懲りたら、必要以上の出張は控えてデスクワークに励むんだ。いいな?」
知己は、なんだか生徒を指導しているみたいな気分になってきていた。
なんだかんだ理由つけて事務室に入りたそうにしていた後藤が、打って変わって素直に
「はい! 分かりました!」
と今、入ってきたドアに逆戻り。
そそくさと帰って行った。
その様子を、事務室から見ていた卿子が
「平野先生」
と声をかけ、招き入れた。
卿子に、後藤から渡された配布物を渡す。
卿子は、配布物を自分の机に置くと、知己に冷えた麦茶を出しつつ、
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