第9話 猛暑が人を狂わす夏季補講

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 なんだか体が熱い。 「夏だから……かな?」  退校時間迫る夕暮れ。  体の火照りを感じつつも、明日の補講の準備を終えて帰り支度を始めた。 「そういえば……」  門脇はお茶の差し入れをしただけで、すんなり帰って行った。 「補講だったら、実験もないんだろ。じゃあ、俺は用無しだな。受験生だし、自分の勉強するよ」 (受験生って……)  門脇の成績から言えば、早々に帰って勉強する必要もないだろう。  なんとなく違和感があったが、教師として勉強するという学生を止める必要もない。  基本一人が好きな知己は、門脇が早々に退散してくれるのはありがたい。  ましてや門脇の知己への気持ちを考えると、尚更だ。 「うっ……、やっぱなんか……変だ」  知己は、体の異変に気付いた。  妙に体が熱い。 (風邪……?)  だが、だるいといった症状はない。  それよりも、なにやら下半身に熱を感じる。  気になってそこを見ると妙に張り詰めてさえいる。 (……最近、忙しくて、自分のことなんか構えなかった所為かな)  一学期の期末考査、成績処理、そして夏休みを迎えた。  知己は高3生担当。  夏休みも夏期補講を行い、怒濤の忙しさ続行中である。     
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