第9話 猛暑が人を狂わす夏季補講

5/15
前へ
/318ページ
次へ
 そればかりか、体勢を崩し、そのまま門脇の胸にもたれかかってしまった。 (これじゃあ、俺が誘っているみたいじゃないか……!)  知己が慌てて離れようとしたが、 「先生……」  門脇はそのまま知己を抱きしめた。  身長など似たような体格だったが、知己が体調不良で肩を竦ませて小さくなっているので、ちょうど収まりよく門脇に抱きすくめられていた。 「分かったよ。この所為で具合悪いんだろ? 大丈夫。男同士だから、こういう事情も分かるって。多分、これ……ヌいたらよくなるから。俺に手伝わせてよ」  言い当てられて、慌てて離れようとするも 「いや、いい。ぅ……ッ」  門脇を押し返す力が妙に弱い。 (変だ。力が……入らない……?)  門脇に、布地の上から優しく撫でられ、抵抗する気持ちも力もどんどん奪われていくようだった。 「や、やめ……!」  ひくひくと体が震える。  快楽を享受するようでもあり、同時に拒否するかのようでもあった。 「せんせ……」 「?」  呼ばれて、俯いていた顔を上げると、門脇が唇を寄せてきた。 「……!」  下唇を啄むように吸われた。 (だ、ダメ……だ……!)  と思いつつも、知己の意志に反して口を開いてしまった。  門脇が唇をずらして、あらためて知己の口を塞ぐ。 「ん……っ……」  どちらからともなく、甘い息が漏れた。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

301人が本棚に入れています
本棚に追加