301人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
「俺、赤組が勝つように全力で応援する。だから……その……」
「?」
「あの、な……赤組が勝ったら、俺にキスしてくれないか?」
「はあ?!」
何をどうしたら、そうなるのか。
「やっぱ、なんかご褒美がないとモチベ上がらないというか……。いや、もちろんなくても応援団なんだから応援頑張るんだけど、勝ったら先生のキスって凄くない? ものすごく、やる気出ると思わない?」
さも素晴らしい提案しているかのような門脇に、知己がどん引きして
「……思わない」
と答えた。
「なんで? どうして? 生徒のやる気を引き出すのが、教師の仕事だろ?!」
知己へと詰め寄る門脇に
「門脇……、お前、告白してからド直球だな」
同席していた菊池が、見るに見かねて声をかけた。
「その上、超がつくほどの剛速球だから、先生も受け止められなくてすっげ困ってるじゃねえか」
そんな菊池に、
「菊池……、俺は悟ったんだ」
門脇は静かに告げた。
「何を?」
「先生に回りくどい手は、効果がない。基本、先生は人間関係……というか恋愛に関してものすごく疎い」
「……マジか?」
「マジだ。年相応な恋愛経験積んでないどころか、下手すりゃ俺たちよりもスキル低い。だから、ド直球の超剛速球ぐらいで、ちょうどいいんだ」
菊池は、それ以上何も言えなくなってしまった。
菊池でさえ、知己の鈍さに思い当たる節は多い。
「お前ら、失礼だな」
最初のコメントを投稿しよう!