第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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 生徒二人に「鈍い」と言われ憮然とする知己に 「と、いうわけで……。先生、いいだろ?」  門脇は、話を進める。 「全然、良くない」  不満をありありと浮かべ、知己は答えた。 「先生だって赤組応援団指導教師だし、赤組が勝つのは嬉しいだろ?」  組別応援団選抜の顔合わせで、知己が生徒・応援団指導にあたる教師ということを門脇は知っていた。 (と、いうか……門脇が赤組応援団長になった時点で、他の教師が敬遠し、結果として俺に回ってきた仕事なんだが)  教師の裏事情を知らない門脇は、知己が応援担当ということにすごく喜んだ。  その延長線上で、今回の「ご褒美」とやらを思いついたらしい。 「赤が勝つと先生も嬉しい。ご褒美があると俺も嬉しい」 「ふざけるな。大体、ご褒美なんて、そんな年じゃないだろ?」 「何だよ。生徒のやる気をなくさせるのかよ」 「不純だろ、そういうの。なんだか……賭け事みたいで。嫌だ。そう思わないか?」  元々門脇は弁が立つ。  それに対して、知己は苦手だ。  懸命に説得しようとするが、どうにも旗色が悪い。 「じゃあ、こうしましょう」 「?」  あらぬ方向から声が聞こえた。  理科室の入り口にクロードが、いつの間にやら来ていた。     
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