第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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「あ、菊池君」  不意に声をかけられ、菊池が俺の事かと自分を指差す。  クロードは深く頷いて、 「さっき近藤さんが君のことを探していたよ」 「え。近藤ちゃんが?」 「近藤さんは『レク委員の仕事をすっぽかして!』と、怒っていたよ。それで私は、菊池君の居所に心当たりがあったから、見つけたら声をかけておくって言ったんだ。近藤さんは、教室で仕事しているから早く来いって」 「あ! やっべー! 委員会の仕事、忘れてた!」  体育祭で、各委員会は何らかの仕事を受け持っている。そのレク委員の仕事を、菊池はすっかり忘れていたようだ。  菊池が顔色を変え、バタバタと慌てふためいて理科室を去っていく。 「さて、先ほどの話の続きですが……」  廊下を走り去る菊池を見送った後、クロードは、理科室内の知己と門脇に向き直った。 「確かに赤組が勝った時だけ『ご褒美』では、知己としては、片方だけにすごく荷担してしまう形になりますね。それは、まるでギャンブルです。例え赤組応援担当でも、知己としては、すごーく嫌でしょ。言ってみれば、白組の生徒に頑張るなってことなので、教師としてまずいでしょ」 「まあ、そうだな。担当はどうあれ、教師としては公平な立場で居たい」  この不毛な門脇の取引をなんとかしたいと思っていた知己は、クロードの助け船を心より感謝し、体よく乗っかろうとした。  その矢先に、クロードからさらに一言。 「じゃあ白組が勝ったら、私にキスしてください。これで、公平です」 「はあ?!」 「片方だけが勝つとご褒美もらえるのが不公平なら、どちらが勝ってもいいようにしたらいいんですよ」 「あの、クロード……?」     
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