第10話 混戦を招いた運命の体育祭

7/31

301人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
 この応援衣装が、かつての部活の服装と同じなので、懐かしんでいるように見える。 「へえ。そんな決まりがあるんだ」  門脇の口ぶりから、どうやら門脇も知らなかったことらしい。 「上衣の紐を内側と外側、ちゃんと組み合わせれば自然に左前になるだろうに……。ほら。してみせるから、よく見て覚えろ」  と、知己が上衣をはだけた時である。 「!」  思わず門脇が息を呑んだ。 「先生……! なんだって、シャツ着てないんだ?!」 「合わせの隙間から下着が見えたら、かっこわるいだろ」 「だからって……!」 (俺以外の男に乳首見せなくても……)  門脇のよこしまな視線に気付いたのか、 「なんだよ?」  知己がそそくさと合わせを閉じて、胸を隠した。 「先生ー、こっち! こっちにも来て、教えてください!」  二年生らしき応援団員が、講堂の端で知己を呼ぶ。 「あー、もう。お前ら、まとまって一度に話を聞けよ」  知己は文句を言うが、 「すみません! 袴が絡まって、そこに行けないんです」  どうやら着物片手に身動きできず、数名、わちゃわちゃになっている。  見るに見かねて、知己は 「もういい。そこに行くから、無理してくるな。紐が余計に絡まるぞ」  慣れた手つきで袴を摘むと、裾を上げ、ひょいひょいと応援団員の間を駆け抜けていった。     
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

301人が本棚に入れています
本棚に追加