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この男、仕入れた余計な知識は実践したがるくせに、肝心な所は堅すぎるくらい口が堅い。
知己は、公私ともに色々と秘密にされ、不愉快な思いもしている。
「そうなのか。分かった。気を付ける。……で、後藤君じゃないのは、どういうことだよ?」
「どうもこうも……。先輩が後藤に一喝入れてくれたのは7月でしたね」
「うん」
「あれから外出禁止にしてデスクワークさせているんですが、積もりに積もった仕事が、9月の今になっても未だに消化できていない状態で。それで後藤の分の、こういった運動会来賓として出席しなきゃならない対外的な仕事を、残りの委員会メンバーで割り振ることになったんです。僕がここに来たのは、その割り振りでたまたま当たったからです」
「……」
それを聞き、知己は言葉を無くした。
(後藤君を封じたら将之が出てきた……? 最悪じゃねえか!)
これなら、まだ後藤の方が良かった……と、将之来校のややこしくなりそうな展開に、知己は青ざめた。
「お?! 最近見ないと思って安心していたのに……。また来たのかよ、おっさん」
案の上、めざとい門脇に見つかった。
遠慮なく来賓テント内にずかずかと入ってくる。
「やあ、応援団長。頑張ってるね」
将之は褒めたつもりのようだが、門脇はそんな言葉に応ぜず
「うっせ! 先生に近づくな。早く帰れ!」
知己と将之の間に割って入ると、威嚇するかのように吠えた。
「相変わらずの見事な番犬っぷり。偉いぞ、忠犬」
思わず頭を撫でられそうになったものだから、
「何の真似だ?!」
門脇が将之の手を激しく振り払った。
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