第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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 門脇の剣幕も特に気にせず 「来賓に『帰れ』とは……。知己先生。門脇君に、一体どういう教育をしてるんですか?」  知己に話を振る。 「先生は関係ないだろ?!」  尚も噛みつかんばかりの門脇と、そんな反応さえ楽しむ将之に 「あぁ。やっぱりややこしくなった……」 (ぶっちゃけ、俺も将之には帰って欲しいと思うんだが)  知己は頭を抱えた。 「それにしても袴姿とは、勇ましいね」  門脇の出で立ちを、上から下まで遠慮ない視線で眺めて言うので 「おっさんが言うと嫌みにしか聞こえないのが、不思議だ」  門脇は、率直な感想を漏らした。 「素直じゃないね。大好きな知己先生に、かっこいい所を見せられて満足なんだろう?」 「まあ、そうかな。ふふん」  門脇は意味ありげに笑った。 「最後の『ふふん』は、何?」 「おっさんは知らないだろうけど、今回、俺は先生のかっこいい袴姿を見ちゃったんだぜ」  門脇が自慢げに言った。 「ああ、その先輩のかっこよさなら知ってる」 「え?」  意外な返答に門脇が驚く。 「高校時代に、それはもう数え切れないほどいっぱい見た。どんなに見ても見飽きないくらい先輩の袴姿はかっこいいんだけど」 「ちょ、おい! どういうことだよ?」  門脇が、知己を問いただすと 「どうもこうも……。こいつ、高校の時の剣道部の後輩だし」  知己がぼそぼそと答えた。 「あ、そうか! そういえば、そんな事言ってた気が……」 (ちくしょう。俺だけが知り得た情報だと思っていたのに、おっさんはリアル高校生の知己先生の袴姿を見ていたとは……悔しい) 「いいこと教えようか?」 「え? 何?」  将之が指先で誘うと、門脇が、将之に耳を寄せた。  あの将之とあの門脇が仲良くしているのを見るのは、不思議な感じだ。 「先輩の胴衣、黒だったんだよ」 「マジか。うわ、それ、似合いそうだな。パンツとお揃いじゃねえか」 「……なぜ、君が知己先生のパンツの色を知っているのかが、甚だ疑問なんだが」  ちらりと知己の方を見ると、嫌そうに眉を寄せていた。     
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