第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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 昼の休憩時間後の一発目、これが運命の応援合戦である。運命といっても、知己や門脇にとっての運命限定であるが。  もうすぐ午後の部開始の13時を迎える。  ゆっくりと確実に応援席に、昼食を終えた生徒たちが戻ってくる。  知己は応援係教師として、いち早く運動場で戻ってくる生徒たちを迎えていた。 「白組の応援が、先行か」  知己が呟いて、そちらに目をやる。  運動場の両端に位置する紅白の退場門。  その白組側には、学ランを着た白組応援団が控えていた。  通常の応援団員は腰の辺りまでの長さの短ランに対し、応援団長は丈の長さが脹脛辺りまで隠れる、いわゆる長ランを着ていた。  真っ黒い学ランに、真っ白の襷に長めの鉢巻きが凛々しい。  襷など普段し慣れない服装ということで、お互いに衣装をチェックした後、団長を中心に演技直前の最後の打ち合わせをしている様子が遠くからでもうかがえた。  知己と門脇は、その真逆。  紅組側退場門に集まっていた。 「先生。俺、頑張るから。見ててくれよな」  白の学ラン応援団に対し、赤は和装の袴姿。  門脇は団長なので、その上にさらに黒い羽織を纏っていた。 (素直に、「がんばれ」と応援できんな)  意気揚々と話しかけてくる門脇に、知己は黙るしかない。 「……」  なぜか自分のキスを賭けての応援合戦に、知己の胸中は複雑だった。  そんな二人の様子を、赤と白のちょうど中央・本部席から将之が見つめていた。 (……午後から、絶対に何かあるはず……)  何の確信も根拠もないが、将之は直感でそう思っていた。 
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