第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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 十三時。 「ただいまより午後の部を開始します。プログラム13番・紅白応援団による応援合戦です」  放送係・美羽のアナウンスが告げる。 「先攻は白組。会場の皆さま。気持ちを一つに合わせ、素晴らしい白組の応援演技を見て下さい」  放送原稿を読み上げると、やがて厳かにそれは始まった。  まず、聞こえてきたのは応援団員と白組応援席の足踏みと手拍子。一定のリズムを刻んでいる。  その後にリズムに乗せて聞こえてきた声。 「……!?」 「!」  ソロ。  しかもリズムのみで伴奏はない。だが恐ろしいほどに安定した音程で、朗々と歌われる声のする方を見れば、指揮台壇上にクロードが立っていた。  たった一人の歌声で始まったその歌に乗って、手拍子と足を踏み鳴らしてリズムを刻みながら、白の応援団がゆっくりと歩を進める。  無言で入ってきた応援団がそれぞれの位置に着くと、応援団も応援席の白組も、クロードの歌に合わせて全員で歌い始めた。 「Queenの”We will rock you.”だ」  門脇が、その整然とした白組の動きに目を奪われつつ、呟いた。 「ずるくね? この演目に英語教師を使うなんて」  白組応援団長の機転で、英語教師のクロードを登用したと思われた。  クロードも喜んで参戦したに違いない。 (あいつ……。偶然を装って理科室に来ていたが、早々に白が勝つと踏んで、賭けにきやがったんだな)  少なからず門脇は焦れた。 (くそ、敵ながら巧いな……!)  マイクを通しているといえど、ある程度の声量が必要だ。それと声の質。これだけの聴衆を前にアカペラで歌い上げるためには、なにものにも頼れない確かな音程を要求された。  クロードの歌声は、どれも十分に満たされていた。     
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