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思いがけない指摘に、知己は戸惑いの声をあげた。
「先生なら、ずっと練習に付き合って、俺たちの練習を見てきている。演技や太鼓のタイミングを知っている」
菊池が言うと
「バカ言うな」
知己が激しく拒否した。
「嫌だ。教師が競技に加勢するなんて、子供の喧嘩に大人が出て行くようなもんじゃないか」
「白だって、教師が出てるじゃねえか?」
壇上のクロードを指差して、門脇が言うと
「それは、そうだけど……」
知己が言葉に詰まった。
口さがない近藤は「放任」と言っているが、知己は行事などは生徒主体で動くものだと思っている。教師が出しゃばるのは、よくないと思っているのだ。
(と、いうか……)
表だったことが嫌いな性格だった。
隙さえあれば、理科室に籠もりたがる知己に一体何をさせようと言うのか。
「先生。甘い」
「は?」
「キスなんて『ほっぺにちゅ』ぐらいだと思っているんだろ?」
「え?」
確かに、クロードの挨拶キスは、いつも頬に軽く触れる程度であった。
「外人の本気キスは、そんな可愛いもんじゃねえ。べろちゅーに決まっているだろ?」
「べ、べろ……ちゅ……?」
思わず、後退る。
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