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「次は、赤組の応援です」
アナウンスの声に、門脇ははっと我に返る。
そのアナウンスとほぼ同時に、知己が本部席近くの中央テント指揮台傍の和太鼓の位置に付いた。
「……っ」
本部席や来賓用テントから、感嘆の声が漏れる。
(何、これ。マジ……?)
将之は、喉までせり上がってくる歓喜の叫びを必死にやり過ごす。
だが、平静を装うにはあまりな状況。
和太鼓の前の知己は、将之が夢にまで見た和装。
その上、襷を掛け、長い赤い鉢巻きをなびかせて、その姿は神々しくさえ見えた。
将之でなくとも、本部席にいた来賓や教師。応援席の生徒達も、まさかの知己の勇姿に目を奪われ、ざわつく運動場が静まりかえった。
(うああああああ! 先輩は、僕を萌え殺しにかかっている……)
思わず息を止めた。
運動会のパンフレットで口元を覆い、叫び出すともにやけそうになるとも分からない顔を隠す。制御しきれない感情を、必死にやり過ごしていた。
平静を装って来賓用パイプ椅子に座っているが、心の中では運動場を萌え転がっているような気分だった。
知己が位置に付くのを確認した門脇は、
「赤組応援団! 押して行くぞ!」
応援団に檄を飛ばした。
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