第10話 混戦を招いた運命の体育祭

26/31

301人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
 門脇の号令に合わせて、知己が太鼓を大きく打つ。  太鼓の音に合わせ、赤組応援団が 「応!」  と返事をすると、運動場に駆け入ってそれぞれの定位置に付いた。  全員が定位置に着くのを確認すると、まるで何かに取り憑かれたように真剣に知己が太鼓を叩いた。  確かに菊池の言った通りだ。  ずっと練習を見てきた知己は、次は何をどうするのか分かった。頭で考えるよりも先に目や耳が覚えていて、勝手に体が動いて太鼓を叩いていた。  知己の渾身の和太鼓の音に合わせ、 「応!」 「応!」  と赤組全体が声を出し、応援団のメンバーは統率の取れた動きで移動し、組体操の技を披露していく。  整然としたその動きは、完成度高いと思われた白組の応援にまったく見劣りしなかった。  何度も練習し、それぞれの動きを合わせてきた成果がよく現れていた。  その演技は、一朝一夕ではできないチームワークの良さ、全体で取り組むまとまりの良さを醸し出していた。  門脇を含めた応援団員の雄々しい演技は、いよいよ佳境を迎えた。 「ラスト、三重の塔……」  しっかりと組まれた土台の全応援団員の傍に、門脇が立った。 (一発勝負……!)  組体操の塔は、やり直しが効かない。  それでは、見劣りしてしまうのは明らか。  九月といえど、未だ中旬。  昼一番の競技とあって、容赦ない暑さが和装の応援団を襲う。  土台になってくれている団員の集中力や体力を考えたら、一発で決めるしかなかった。     
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

301人が本棚に入れています
本棚に追加