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門脇の号令に合わせて、知己が太鼓を大きく打つ。
太鼓の音に合わせ、赤組応援団が
「応!」
と返事をすると、運動場に駆け入ってそれぞれの定位置に付いた。
全員が定位置に着くのを確認すると、まるで何かに取り憑かれたように真剣に知己が太鼓を叩いた。
確かに菊池の言った通りだ。
ずっと練習を見てきた知己は、次は何をどうするのか分かった。頭で考えるよりも先に目や耳が覚えていて、勝手に体が動いて太鼓を叩いていた。
知己の渾身の和太鼓の音に合わせ、
「応!」
「応!」
と赤組全体が声を出し、応援団のメンバーは統率の取れた動きで移動し、組体操の技を披露していく。
整然としたその動きは、完成度高いと思われた白組の応援にまったく見劣りしなかった。
何度も練習し、それぞれの動きを合わせてきた成果がよく現れていた。
その演技は、一朝一夕ではできないチームワークの良さ、全体で取り組むまとまりの良さを醸し出していた。
門脇を含めた応援団員の雄々しい演技は、いよいよ佳境を迎えた。
「ラスト、三重の塔……」
しっかりと組まれた土台の全応援団員の傍に、門脇が立った。
(一発勝負……!)
組体操の塔は、やり直しが効かない。
それでは、見劣りしてしまうのは明らか。
九月といえど、未だ中旬。
昼一番の競技とあって、容赦ない暑さが和装の応援団を襲う。
土台になってくれている団員の集中力や体力を考えたら、一発で決めるしかなかった。
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