第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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 体躯の小ささを呪う日々だったが、応援団長として塔の天辺に行くことを考えたら、門脇は恵まれた体型とも言えた。 (邪魔だ)  判断した門脇は、団長が纏う黒い羽織を脱ぎ捨てた。  バランスを取りながら、また土台のメンバーに負担をかけないよう細心の注意を払いながら、登っていく。 「頑張って、門脇君……」  アナウンスの美羽は、思わず呟く。  演技中ということでマイク電源を切っていたのが、幸いした。  アナウンスもなく、赤組ばかりでなく白組も、運動場にいる全てのものが言葉をなくし、固唾を呑んで見守っていた。  静寂の中、ただ緊張感だけが漂っていた。  門脇の動きに合わせて、知己が和太鼓を小さく叩く。  それが、尚、緊張感を増した。  門脇が上に登るのに合わせて、太鼓の音も少しずつ大きくなっていく。  いよいよ塔の頂上。  がっちり組んでいるとはいえ、不安定な人間の台の上に立つのは勇気が要る。  だが、門脇は迷わなかった。  下半身を踏ん張り、ぐっと上体を起こす。 「……!」  天辺に立つ門脇にタイミングを合わせ、  どん!  知己は、大きく太鼓を叩いた。  同時に、門脇が威勢良く 「覇っ!」  と、塔の天辺でポーズを決めた。 「わあああ! 決まりました! 赤組応援団の応援演技、見事、決まりましたぁ!」  思わず美羽が叫ぶようにアナウンスするも、湧き上がる歓声にかき消された。 「こら! 放送、えこひいきすんな!」  放送担当教師・樋口が、美羽の後頭部を、丸めた放送原稿でぽこんと叩く。  それでも気にせずに美羽は 「赤組、かっこいいです! 門脇君、最高です! 門脇君、めちゃイケてます! 門脇君、門脇君、門脇くーーーん!!」  と何かに取り憑かれたように叫んでいたので、樋口はもう注意するだけ無駄と判断し、マイクの音量をそっと0にするのだった。 【挿絵】 https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=57
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