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「しまった。僕としたことが……」
あまりの出来事にスマホで動画撮ることさえ忘れ、知己に釘付けになっていた将之が呟いた。
(感動で人は死ねるんだなぁ……)
などと、いまだに一人で勝手に盛り上がっている。
無事に塔を終え、赤組応援団一同が整然と並ぶ。
並び終わったところで門脇が
「赤組、退場ー!」
と号令をかけると、知己が速いテンポで和太鼓を叩き、赤組応援団は勇ましく駆けて退場した。
運動場は、勇壮な演技の余韻に包まれていた。
赤組が退場門を抜けた所で、和太鼓を夢中で打っていた知己は急に我に返った。
「は……、恥ずかしい……」
和太鼓の撤収と共に、急いで引っ込もうとする。
「先輩が隠したがっていたのは、これだったんですね?」
先ほどまでの勇姿はどこへやら。
まるでこっそりと逃げるように去ろうとする知己の腕を掴み、将之が訊いた。
「うるさいな」
赤い顔をして、知己はその手を振り解いた。
「早く着替えたいんだ。どけよ」
照れ隠しに素っ気なく言う。
「答えなくてもいいですよ。家に帰っていっぱい聞いたらいいんですから」
将之は嫌な笑顔で言うと知己を離した。
「ちっ」
また家で色々と聞かれるのかと思うとうんざりするが、素に戻った今は一刻も早くこの衣装を脱ぎたい。
きっと体育倉庫裏で、菊池が寂しげに待っているに違いない。
体育倉庫の裏に行くと、知己のジャージは門脇が持ち、菊池は体操服姿で待っていた。
「なんだ? 俺の預けたジャージ、着ていなかったのか?」
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