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「着てたんだけど、門脇が戻って来るなり剥かれました。今日は、そういう運命の日なのかもしれません……」
菊池が、悲しそうに言う。
(? 意味が分からん)
知己が将之に捕まっている間に、門脇は早々に菊池の居る体育倉庫裏にやってきていた。
「彼シャツ……じゃなかった先生の服をお前が着ているのは許せん!」
怒りにまかせて菊池からジャージを剥いだ。
剥いだ後でふと思いついたのだろう。
「先生のジャージ……」
ジャージを抱きしめてみた。
「あ、やっぱりいい匂いがする……」
匂いを嗅いでみたり、おもむろに袖を通してみたりと知己のジャージを満喫していた。
それを知己に告げると間違いなく門脇に虐げられると知っている菊池は、それ以上何も言わなかった。
「もう、着替えるのか?」
服を渡しながら、名残惜しそうに門脇が聞くと
「菊池の衣装だろ、これ。折角の菊池応援団員の晴れ舞台に、いつまでも俺が出しゃばってちゃ悪い。あ、門脇。また、倉庫脇に立って、目隠し役をしてくれ」
他ならぬ知己の着替えということで、男同士の着替えだが遠慮して門脇は倉庫脇で後ろ向きに立った。
そこで、1分ほどで振り向いてみた。
事故を装い、あわよくば知己の着替えを見ようと思っていたが、知己はもう着替え終わっていた。
「先生、なんかもう特技の域だな。その早着替え」
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