第10話 混戦を招いた運命の体育祭

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「対する赤組……」  美羽も結果を見て、驚いたような口調に転じた。 「団結力十点に演技・技術点の十点、こちらも満点の二十点です!」  白組が満点ということで、落胆していた赤組からわあっと歓声が上がった。  その歓声を遮って、美羽が 「ですが、どちらも教師の手を借りている……ということで、マイナス五点! 結果、両チームに十五点ずつが加算されます!」  と更に告げた。  わあっと再び歓声が上がる。今度は、赤組だけでなく白組からも。  両チーム、減点はあったものの満点なのだ。  厭が応にも盛り上がる。 (同点……か……)  そんな湧き上がったムードの中、門脇は安堵の息を漏らした。 (つーことは、俺にご褒美はないものの、あいつにもない……。これで良かった……のか?)  危うく、知己とクロードのキスという最悪な展開は避けられ、ポジ思考にもそう思っていた時だった。 「菊池! やったー!」  思わず知己が、菊池に飛びついていた。  それに目を剥く門脇。 「なんで、俺じゃねえんだよ?!」  共にこの喜びを分かち合いたい。  その相手は応援団長である自分の筈なのに、なぜ知己は菊池と喜びのハグを交わしているのだ?  阿修羅のような形相に転じた門脇を見て 「せ、先生!? なに、何? 頼むから空気読んでぇ!」  抱きつかれた菊池が慌てて叫ぶが、知己はそんなことに一切耳を貸さずに 「お前のお陰だ!」  嬉しそうに言った。 「お前の機転で俺も加勢し、同点になった! これって、俺が加勢してなかったら負けてたかもしれないし、逆に教師減点がなくて勝ってたかもしれない! 奇跡の同点だ!」  そう。  まさかの同点。  きっと白組陣営のクロードも、門脇と同じく呆然としているのだろう。 (いや、今はそれよりも……) 「分かったから、離れてぇ!」  くっついている知己を菊池が必死の思いで剥がす様に押しのけたが、既に遅く 「……菊池。覚えていろよ」  門脇が低い声で、握りこぶしを震わせつつ凄んでいた。 (あ、俺。今日が命日になるかもしれない……)  菊池は、密かに自分の運命を呪った。  門脇と知己の運命の応援合戦は、どうやら思いがけず、菊池も巻き込んでしまったようだった。           ー第10話・了ー
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