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玄関で、ガチャガチャと鍵を操作する音がする。
将之が時計を見ると、既に0時近い。
「遅かったんですね」
一次会で終われば22時頃。この時間……ということは、珍しく二次会まで行ったようだ。
「将之。起きてたのか」
玄関まで出て行ってみれば
「……今日は、いろいろとサービス満点ですね」
知己の姿を見て、少し間をおいて将之が言った。
知己は、昨年のゴスロリ衣装を着た上に化粧までばっちり施されていた。
「うるさいな」
「今年は女装を免れたんじゃなかったんですか?」
「……樋口先生だ」
「はあ」
「あの人が酔っ払って、『平野の女装がない体育祭は面白くない!』と叫んで、その上卿子さんまで『待ってました! メイクは私に任せて!』なんて言い出したもんだから」
好き好んでしたわけではないことを主張したそうだが、知己の語る女装に至る理由で
(あ、分かった。結局、樋口先生はともかく卿子さんに押し切られたんだな、先輩は)
将之は合点がいった。
樋口がどうこう言っても、毛嫌いしている女装なんてする訳がない。
だが卿子がメイクするとなれば、自然と知己に近寄る。
それを分かっていて、知己が断れる筈などないのだ。
そこで将之は、はっと気付き
「あいつは?」
と尋ねた。
「え? あいつって?」
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