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「金髪英語教師のクロードさん! あの人は、あなたの女装見て何か言ってませんでしたか?!」
悔しい。
クロードに、この知己の艶姿を見られたと思うと異常に悔しく思ってしまう。
「え? えーっと……確か、コークハイ飲みながら、ファンタがどうのとか、蕎ソーダがなんとかって言ってた気がする」
「は?」
「ドリンクのお代わりをしてたんだと思う。大丈夫。俺なんか、眼中にねえよ。いつものお前の心配しすぎ」
「……先輩……、もしかしてかなり酔ってませんか?」
「バカ言うな。お前も家永も二人して『飲み過ぎ危険!』っていうくせに。俺の酒癖の悪さを卿子さんに知られたり、卿子さんを襲ったりするわけにはいかないだろ? ちゃんと俺は酎ハイ1杯でやめておいたぞ」
だったら、知己のリスニング力を疑ってしまう。
知己の言い方から、「Fantastic!」や「So beautiful!」だの絶賛したんだろうと憶測できるのだが、
(でも、それが先輩にまっっっっっっっっっったくと言っていいほど通じていなくて、良かった)
思わぬ賛辞に知己も聞きとれなかったと思われる。
(まあ、女装褒められて喜ぶ先輩じゃないけど……)
胸を撫で下ろす将之に
「クロードのことよりも、ファスナーを下ろしてくれ」
知己は後ろを向いて頼んだ。
「今年は、随分素直なんですね」
「去年、無駄な努力したのを覚えているだけ」
去年も同じこのゴスロリワンピで背中のファスナーにうまく手が回らずに苦労した。
(まさか、今年も着ることになろうとは……)
卿子の
「衣装着た後は、是非、私にメイクさせてくださいね(ハート)」
には、どう足掻いても勝てない……と、背中でファスナーを下ろしてもらいながら、知己は悟った。
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