第10話・余談 体育祭plus 1

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 同じく荒い息の将之が声をかける。  返事はない。  鏡には項垂れた知己の頭頂部だけが写り、その表情は見えない。  後、少し。知己より少し遅れて達しそうだったのだが、あまりの知己の乱れっぷりに一度動きを止め、将之は、続きをしてもいいか考えあぐねた。 「……っ……」  荒い息の中、知己が吐き出すように何か言った。それは、まだ呼吸が整わないので、うまく言葉にならなかった。 「何?」  聞き返す将之に 「……向き……っ」 「え?」  顔を上げ、怒りの表情たたえた知己が言う。 「向き!」  将之がいぶしかげに思っていると、鏡を通して知己が将之を睨み付けながら言った。 「……向き、変えろっ……! このままなら、最後まで、……させねー!」 (あ、怒ってる……。しかも、本気で)  二カ所どころか三カ所も攻めた所為だろう。  今回ばかりはムキになって責め立てた将之に、珍しく罪悪感が沸いた。 「その正常位推奨委員会みたいな強情な態度、なんとかなりませんか?」  それでも一言いっておかないと済まないのは、将之の性格であるが。 「うるさいっ! ちゃんと……しないと、許さない!」  怒る知己を宥めるように、そうっと体を抱え上げ、大理石の天板を支えに体を反転させた。     
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