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知己は持っていたDVDを返そうと急ぎ声をかけたが、玄関のドアはそのままバタンと閉まってしまった。
「これ……、どうしよう」
返しそびれたDVDを知己が呆然と見つめた。
「心配しなくても、月曜に返したらいいでしょ。僕から渡しておきます」
やはり不機嫌な将之がやっと重い腰を上げて知己の傍に行くと、知己の手から問題のDVDを取った。
「それにしてもあの堅そうな家永さんが、これを観るとはね……」
冷めた目でパッケージを見つめる。
「別に観たっていいだろ。家永だって男なんだし。でも、多分、言い訳じゃなくて本当だ。ただ持って帰ってしまっただけだと思う。あいつは観ないよ」
「じゃあ、なんでこれが部屋に有るんです? 学生に返す予定なら、鞄の中に入れたままにしておけばいいものを。どう考えても観るつもりがあったとしか思えないんだけど」
淫らなパッケージは、例の知己似の女優が誘うように微笑んでいる。
(あの人がこのパッケージを見て、中身を見ない筈なんてない)
将之は苛立たしく思った。
だが、知己は相変わらず
「きっとそれは、鞄の中身を出してきたんじゃないの?」
と、またも家永寄りな意見を出す。
それがますます将之を苛立たせるというのに。
「それって先輩に、こんなのを持っているって思われたくなかったからですね」
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