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「え……? どういう意味?」
「……」
妙な間が流れる。
「まさか、気付いてない? 家永さんちにあったものと同じとしか思ってなかった?」
たたみかけるように言われ、
(ケース? 何?)
改めて将之の差し出したDVDケースの女優の顔をじっと見つめる。
随分と経って
「……………あ、……あぁ!」
知己が声を上げた。
「もしかして……この人と俺、似ている? あ、それで後藤君は俺にいっぱい謝っていたのか……」
やっと後藤の反応に合点がいく。
「……鈍い……」
驚く将之に
「仕方ないだろ。俺は自分の女装姿なんて正視できっこないし、それに自分ってのは、朝、鏡でちょっと見るくらいで、そんなに見ないもんだろ」
と知己は言い返した。
「折角だから、観ますか?」
「え?」
唐突な将之の申し出だった。
「僕は、家永さんが観たかもしれないDVDの中身が気になるんですよ」
(将之がAVを観る?)
妙な感覚に陥る。
(……なんだろう。なんだか……嫌だ)
もしかしたら、自分以外の人に将之が欲情するのかもしれない。
そう思うと、知己は腹の底にもやもやとしたものがわき起こってくるような感覚に襲われた。
「……お前も、こういうのを見るのか?」
と問えば
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