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「どっち視線で見てます?」
と聞かれた。
「え?」
尋ねられた意味が分からず、逡巡する。
(どっち視線って……)
「お、……男の方に決まっているだろ!」
うっかり女優側で見てしまっていたことに気付き、真っ赤になって答えた。
(ああ。くそ……ダメだ! こういうのを男視点で見られなくなっているなんて、俺、やばい。というか、この女優の顔がダメだ!)
知己は、もう何でもいいから、自分ではない誰かの所為にしたくて、とりあえず自分似の女優の所為にした。
(……あれ?)
ふと、背中に違和感を覚える。
「……」
知己は、背中から覆い被さるように将之に抱きつかれてTVを見ていたのだが、さっきから妙な感覚がある。
「将之……」
と問えば
「なんです。良い所で声かけないでください」
不満げに将之が答える。
「背中に、なんか当たっているんだが……」
と言えば
「当てているんですよ」
視線はモニターに釘付けのまま、将之が答えた。
何かの文献に影響されたその口ぶりに
「……また、何かの本を読んだか?」
と聞いたら
「ええ、ちょっと」
将之は素直に答え、そのまま黙した。
知己の方は、将之とは逆に、背中に当たる将之のものが気になって、もはやAVどころではない。
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