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将之が一気に腰を進めようとした、その瞬間
「♪♪♪♪……」
「え? な、何?」
知己が驚き、顔を上げる。
「?」
将之も、その音楽の鳴った方を見た。
テーブルの下。
段通の上に見慣れない携帯が落ちている。
二人からはちょうど死角になっていた。
「……後藤の、携帯だ」
将之が拾い上げて、
「はい。もしもし」
しつこく鳴る電話に根負けして出ると、
「あ、先輩!? すみません。俺、慌てて携帯を落っことして来ちゃったみたいで」
と弾むような後藤の声。
焦って、電話してきているようだ。
「やっぱり先輩の部屋に落としてたんですね。ああ、見つかって良かった。今から取りに行きますので、よろしくー!」
「今から? 月曜でいいだろ?」
「やだなー。先輩、冗談でしょ? 携帯はDVDとは違って、ないと困りますから……(笑)。実は、もうマンションの下のコンビニから電話かけているんですよ。後2分ほどで着きます。受け取ったらすぐに帰ります。だから、ご迷惑はかけませんよー」
明るく言う後藤に
(今現在、ものすごく迷惑かけられているんだけど)
と将之は思った。
「おい」
部屋に来られては困ると言おうとした。
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