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将之がちらりと知己を見ると、欲に浮かされて高揚した顔の知己が視線に気付いて目を反らした。
中断されて、もぞもぞと気恥ずかしそうに身体を横に向ける。
こんな前も後ろも、どろどろ状態の今の知己を見られては困る。
だが
「じゃ!」
と、後藤は用件だけ伝えると将之の話も聞かずに速攻電話を切った。
幸か不幸か、先ほどの携帯の着信音で驚き、将之の方は萎えてしまっていた。
(二分じゃ、どう足掻いても中途半端だな)
と判断し、仕方なく
「先輩。僕、マンションの玄関まで後藤の携帯を届けてきます。待っててください」
将之は手早く身支度を調えつつ言うと、ソファで疲れ果てたように横向きに寝ていた知己が無言で頷いたのが見えた。
その背中を見て、将之に少しだけ罪悪感が湧く。
(ああ、こんなことなら……)
焦らさずに、知己がねだった時に入れてやれば良かったと思う。
あんなに欲しがる知己はなかなか居ないのに。
きっと嫉妬もあったと思う。
家永との月一逢瀬。
しかも、部屋にはあのDVD。
きっとそれを見て知己とのセックスシーンを家永が妄想したのではないか、などと思うと無性に腹が立った。
そうして、なまじっか余計なことをしたが為に、焦らしに焦らしまくっての絶頂寸前で、お預け状態にしてしまった。
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