第5話 春の日に理科室へ訪れた客

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第5話 春の日に理科室へ訪れた客

 その日の放課後は、珍しく門脇達は来ていなかった。 (そういえば、今日は定例の学級委員会だったな)  と一人、理科準備室で寛ぎながら知己は思う。  最近、門脇に加え菊池まで訪れるようになった理科室。  元々は特別教室棟最奥で、通常教室棟から一番遠いここには、放課後は誰一人訪れるものは居ない。  久しぶりに静かな午後である。  春の午後、うらうらと柔らかな日差しに包まれ (だいぶ、日が長くなったなー。……さて、ぼちぼち明日の準備に取りかかろう)  と思い、隣の理科室の方へのドアを開ける。 (明日は化学式の授業だから、実験の準備は要らないな)  今日使った実験道具を理科室奥の棚に整理していると、理科室の横、廊下側の窓をコンコンとノックする者が居た。  そちらに目をやると 「クロード先生……」  だった。  窓の向こうで手を振っている。  知己がサッシの窓を開けると、クロードは微笑んで 「放課後になると平野先生は職員室に居ないんで、いつもどこに行ったのだろうと思ってました。理科室に居たんですね」  窓越しに話しかけてきた。 「俺を捜しに?」 「Yes.」 「わざわざすみません。誰からか電話がかかっているのですか?」 「No.」     
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