301人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
はるばる通常教室棟の職員室からここまで来たのだから、てっきり保護者か業者だかの電話がかかってきているのかと知己は思ったが、そうではないらしい。
「実は、東陽高校の校舎を探検がてら、いつも消える平野先生を捜してみたんです」
と楽しそうに答えた。
「ああ、そうだったんですね」
クロードは、東陽高校に赴任して数週間。
まだ教室や校舎など、迷って始業時間に遅れてしまうことがあるとぼやいていた。
「やっと見つけました。理科室は遠いですね」
言葉とは裏腹に、とても嬉しそうに笑うクロードに
(オリエンテーリング感覚で、俺を捜していたんだな)
知己もつられて笑った。
「放課後は、いつもここでお一人で過ごすのですか?」
クロードが尋ねる。
「そうだといいんですが、普段は一人じゃないんですよ。今日は、たまたまです」
「?」
「翌日の授業の準備を手伝ってくれるボランティアが約2名いるんですが、今日は会議でなかなか来れないみたいです」
「ボランティア?」
「ええ。覚えているかな? この間、うちのクラスのレクに先生も呼ばれたでしょ。あのレクを計画したレク委員の菊池」
クロードは首を捻る。
クロードを呼んだのは、もう一人のレク委員・近藤大奈だったのだから、菊池は印象が薄い。
「それと、学級委員の門脇です」
「ああ、門脇君」
クロードの反応は、意外にも門脇の方だった。
最初のコメントを投稿しよう!