第5話 春の日に理科室へ訪れた客

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(俺はあのレクを、すっごい複雑な気持ちで付き合ったのに……! そんなズルをしていたのか……!)  先日、将之から、また嫌みを言われた。 「そういえば、門脇君問題は解決したんですか?」 「ああ、まあ……うん……。解決はしてない……な」 「なんですか? 歯切れの悪い言い方して」 「問題……続行中というか、悪化してるというか」 「悪化? やむえず担任することになったのは、聞いてますけど」 「うん。まあ、その……う、ぅぅ……」  まさか、手を繋いで妙な空気になったとは言えず、知己は黙った。  そんな知己に呆れたように 「可愛い生徒を傷つけたくないのは分かりますけど、曖昧な態度はもっと傷つけるんですよ」  と将之は示唆した。 「分かってる」 「どうだか」 「何だよ」 「先輩は分かっているつもりで、分かってないことが多いんで。これでも僕は心配しているんですよ」  などと嫌みに近い心配をされたばかりだ。 (俺が色々と勘違いしたり、そういうことに鈍感だったりで、問題をややこしくしているのは分かっているんだ)  とは言え、そういう性格は簡単には治らない。  この間のレクも不可抗力で門脇と手を繋いだと、自分を納得させていた所だったのに。
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